でも、何かおかしかった。

カオルの様子が。


「そんな、バカな……! 

 なぜだ、なぜなんだ!

 クソッ…………!」


部屋の中をのぞくと、そこは書斎のような場所だった。

カオルは背中しか見えないけど、何か本のようなものを手にしている。

それで、ずっとなにか、うめき声のようなものをあげている。

あたしは少し悩んだけど、あまりに心配だったから声を掛けることにした。


「カオル……、どうしたの? だいじょうぶ?」

「その声は、リョーコ……!」

「待ってて、いま行くからね」


しかし、カオルの次の言葉は信じられないものだった。


「来るな!」


時間が、止まりそうだった……。