「…ふふ」

ふとあたしの方を見たリョウくんが手を振ってくれて、照れくさくなる。

そして、リョウくんに向けて小さく振り返す手に、自分の中の"女の子"を感じていた。

「夢希ちゃん何して…あ、やだぁもーラブラブじゃん」

「え…⁈あ、えと……」

リョウくんと手を振り合っているところを小野さんに見られ、照れくささが増す。

「隠さなくていいの。わたしは夢希ちゃんのこと、応援してるんだから」

ほわんとした笑顔が、相変わらずお母さんとかぶる…。

「うん」

お母さん……あたしが今、リョウくんと付き合っていることを知ったら、何て言うかな。

リョウくんのこと気に入っているみたいだから、多分喜んでくれるだろう。

それでもお父さんがまた転勤になったら、あたしも一緒に行かなきゃいけないんだろうな……。

一番考えたくないーーー逃げ出したい、でもこれが現実。

だからあたしは、リョウくんとのことを話せずにいた。

リョウくんにも、あたしのことを話せないままでいたーーー。