でも今は違って、心地良いドキドキが身体を巡って、ふわふわとする。

「…」

気を引き締めていかなきゃ、S高目指すんだから!

そう心の中で喝を入れ、教室に入った途端ーー、

「夢希ちゃん、ちょっと来て!」

あたしは腕を引かれ、小野さんに拉致られた。

「え、ちょっと何…」

「座って座って」

促され、というよりは強引に、小野さんの席に座らされたあたしの前には、斎藤さんがいた。

斎藤さんは小野さんと仲がいいから、その繋がりであたしとも仲良くしてくれている。

夏休みには、何度か3人で遊んだりもした関係だ。

「さ、斎藤さんまで…どうしたの?」

「夢希ちゃん、菊谷くんと付き合ってるって本当?」

「え…何で……」

耳打ちしてきた割には大きな声で、その内容をはっきりと聞きとることができた。

「夢希ちゃん顔真っ赤だよー。ホントにホントなのぉ?」

小野さんが、周りを気にしながら控え目に言う。

リョウくんと付き合い始めたのは夏休み中のことで、小野さんたちにはまだ話していなかった。