「…」

寝ぐせ、後で直さなきゃ…。

鏡に映る自分を、あたしは何度も確認していた。

菊谷くんと……彼氏と一緒に誕生日を過ごすって、どうすればいいのだろう。

昨日の今日で、渡せるプレゼントもない。

そもそもまだ、彼氏ができたという実感も、彼女になったという実感もないのだけど。

「あ」

短く声をだしたあたしは、スマホを手に取った。

《ありがとう。佐久田くんも、おめでとう》

佐久田くんから誕生日おめでとうとラインが届いていたけど、あたしは返すのを忘れていた。

《昨日は、あれからどうしてたの?》

あたしは、昨日佐久田くんがジュースを買いに行ったまま戻って来なかったことが、気になっていた。

《あぁ、連れと会って盛り上がっちゃって》

「……」

それならいいんだけど……。

《それより聞いたよ。リョウと付き合うんだな》

《うん》

第三者から言われたことで実感が増したあたしは、ぽかぽかとあたたかくなった。

本当に、彼氏彼女になったんだ……。