「菊谷くん……」

あたしは、思わず涙が出そうになるのをぐっとこらえた。

あたしのことを見ていてくれたのは、佐久田くんじゃなくて菊谷くんだったの…?

「夢希、俺と付き合ってほしい」

「でも……」

菊谷くんはかっこいいしモテるだろうに、なんであたしなんか…。

「でも何?思ってること、ちゃんと聞かせて」

考えれば考えるほど、ドキドキが止まらなくなる。

「き、菊谷くんは、モテるでしょ……なのに、何であたしなんか…」

「俺は、夢希がいいの。夢希は俺のこと嫌い?」

菊谷くんーーー…。

「そうじゃないけど…」

そうじゃないけど…あたしはチビだし、顔だって特別かわいい訳でもない。

自分のことが大嫌いで、親のことも大嫌いで…どうしようもないあたしなのに。

「じゃあ決まりだな!夢希」

「え…決まりって……」

「こういうこと!」

「きゃ…!」

菊谷くんがあたしを抱き寄せたりなんかするから、あたしの身体は緊張でガチガチになっていた。