「夢希きょろきょろしすぎ(笑)」

「…」

佐久田くんに言われようやく落ち着くあたしは、ただの子供だった。

恥ずかしくなってうつむいたあたしの視界に入ったのは、アジサイ柄の浴衣。

そう、あたしはまだ、今着ているこの浴衣さえも買えない…ただの子供。

転校ばかりさせる親に恨みを持っていても、結局その親がいないと生きてはいけないんだ。

「今年はスゴイ人だな。俺テキトーに何か買ってくるから、ロウと夢希はその辺で待っててくれるか?」

「わかった。じゃあご神木のところにいるわ!」

「了解!」

そういうと菊谷くんは、人ごみをかき分けながら、屋台が並ぶ方へ歩いて行った。

「夢希、あれがご神木だから」

「うん」

あたしと佐久田くんは、神社のご神木を目指して歩いた。

「近くで見ると、大きいね…」

「そうだな」

きっと樹齢何百年とかなのだろうご神木は、その樹齢に反してとても力強く感じた。