見れば神社はすぐそこで、声の主は菊谷くんだった。

「あ、リョウ!」

「遅いぞ。てか何で2人でいるんだよ?」

「だって学……」

「たまたまそこで会ったんだ。な、夢希?」

学校の前で待ち合わせたのに…佐久田くんは何で嘘をついたんだろう。

「…うん」

今はわからないその答えを気にしながら、あたしは佐久田くんに合わせて返事をした。

「まぁいいや。夢希の浴衣姿がかわいいから、そういうことにしておくよ」

「……!」

そういうことをさらりと言えるからか、菊谷くんはどこか大人びていて、同い年とは思えない時がある。

優しい風が、吹いてくるようだった。


「わぁ…!」

神社は想像していたよりも大きくて、人もたくさん来ていた。

そんなことよりも、夏祭りという久しぶりすぎる空間に、わくわくする気持ちを隠せないでいるあたしは、見るもの見るものが新鮮だった。