「は…早く行こっ!」

あたしの心臓が、小気味良い音を立てる。

「あっ、おい待てよー!ホントにたまたまなのかぁー?」

「たまたまって言ってるでしょ!」

あーもう、ただでさえ浴衣で暑いのに、どんどん汗がでてくる。

「あれ、夢希?何で怒ってんの?」

すぐに追いついてきた佐久田くんが、あたしの顔を覗き込む。

「べ、別に…」

だからあたしは、男子と並んで歩いたり顔を覗き込まれたり……そういうことに免疫がないんだってば。

前に菊谷くんに同じ事された時も、心臓飛び出るかと思ったくらいだし。

「…あ、そういえば菊谷くんは?」

3人で…って言ってたのに、今頃菊谷くんがいないことに気が付くなんて。

「あー…リョウとは神社で待ち合わせることになってるんだ」

「そうなんだ。…てか佐久田くん、首どうしたの?」

「首?」