どうしてもピンクを取り入れたいらしいお母さんを無視して、あたしはその水色の浴衣を見つめた。

淡い水色に、少し濃い水色とピンクのアジサイ柄がかわいかった。


"夢希は絶対水色のゆかたが似合うと思ったのにー"

「…違う」

「え?やっぱりピンクにする?」

佐久田くんは、関係ない。

「違うから…」

「まぁ、変な子ね(笑)」

あたしは昔からピンク系よりブルー系の方が好き…佐久田くんの言葉に影響されたわけじゃない。

あたしは、心の中でそう言い聞かせた。



そして今日は7月31日、夏祭り当日ーーー。

水色のアジサイ柄の浴衣に黄色の帯を締めたあたしが、リビングの鏡の前に立っていた。

「よし、これでバッチリよ。でもやっぱりお母さんはピンクの帯が良かったわ」

「…」

お母さんてば、まだ言ってるよ。

「それは母さんの好みだろ」

今日は仕事が休みらしいお父さんが、目を細めて笑う。