「浴衣?」

意外だったのだろう、お母さんは不思議そうな表情であたしを見ていた。

「うん…。と、友達と、夏祭りに行くんだ」

「まぁ、友達⁈そうなのね、そういう事は早く言ってよ!浴衣なら高島屋がいいかしら……松坂屋もあるわね。かわいいの選ばなくちゃ」

「……」

お母さんは、ひとりウキウキしていた。

お母さんについてひとつのデパートに入ると、その涼しい空間に汗が引いていく。


「夢希ちゃんこれなんかどうかしら?」

「…ピンクは嫌」

あたしとお母さんは、浴衣売り場で物色中ーー季節柄設けられているその売り場には、色鮮やかな浴衣がたくさん並んでいた。

「そお?夢希ちゃんはピンクが良く似合うと思うんだけど…」

ピンクはお母さんが好きなだけでしょ。

心の中で突っ込みを入れながら、ふとある浴衣が目に入ってきた。

「これが、いいな…」

「あら、水色もステキね。水色ならピンクの帯でも合うわね!」

「…」