そのほんわかとした笑顔……やっぱり小野さんと似てるな、って違う違う!今はそれじゃない!

「お母さん…やっぱり、買い物に行く!」

「えっ⁈」

あたしの言葉を聞いたお母さんは、お皿を落としそうになっていた。

そういえば、お母さんと買い物に行くのも……いつ振りだろう。

「支度…してくる」

「お母さんも、急いで支度するわねっ!」

驚いたあと、嬉しそうにしているお母さんに背を向け、あたしは部屋に戻った。

どんな顔をしていいのかわからなくて……すごく、照れくさかった。



「夢希ちゃん見て!あれがJRセントラルタワーズよ。それから向こうに見えるのが、ミッドランドスクエア。どこに行こうかしらね〜」

名古屋駅に着くなりお母さんのテンションは急上昇、騒がしい観光客みたいだった。

名古屋の街は思っていたよりも都会で、前に住んでいた大阪とは少し違った雰囲気がした。

「浴衣…」

「え?なぁに?」

「浴衣が、ほしいの」

あたしは良く晴れた夏の空を見ながら、ポツリとひとり言みたいにつぶやいた。