「…」

だから慣れてないんだってば、そういうのに。

でも夏休みは40日間もあるーーー毎日宿題する訳でもないし、そのうちの何日かを誰かと一緒にいるのも、たまにはいいかもね。

めずらしくそんな風に思ったあたしは、少しだけ迷ってから、佐久田くんに《了解》と返信した。

《ゆかた着てこいよ!》

《ゆかたなんか持ってないよ》

《え〜っ、持ってないのかよー。夢希は絶対水色のゆかたが似合うと思ったのにー》

「…ふふっ」

ぶーぶー文句を言っている佐久田くんの顔が目に浮かぶようで、想像していたら可笑しくなってきた。

浴衣か…もう何年も着ていない、だいたいあたしには必要ないアイテムだと思っていたし。

夏祭りだなんて、何年ぶりだろう。

「あ…!」

あたしはハッとして、慌ててリビングに戻った。

「お母さんっ…!」

「どうしたの?夢希ちゃん」

カチャカチャと音を立てて洗い物していたお母さんが、ゆっくりと顔をあげた。