「ちっ。女かよ。儀式は失敗か?また儀式をやり直す。この女は城から放り出しとけ!」

玉座?に座る男が言う。年は二十代前半くらい、髪は短髪の金髪。ややタレ目でゴミを見るような目で私を睨んでいる。なんか豪華な服装。なんか王様っぽい?

「はっ!ほらっ。さっさと歩け!」

周りにいた兵士達が男の言葉に従いうちの肩を掴み強引に扉の方に連れて行こうとする。

「ちょっ。痛い!歩くから!手離して!」

「暴れるな!城内に逃げられても困る。貴様の拘束を解くわけにはいかない。外に出るまでだ。諦めろ。」

そして私は城の外まで連行された。

「命があっただけ良かったと思え!」

そう言って兵士は城の中へ消えて言った。

状況がイマイチわからないのだが……。

少し思い出してみよう。


私は芦田桃子。現役の女子高生。のはず。さっきまで学校の友達と一緒に他愛もない話をしていたはず。気がついたら。というよりいきなり目の前の風景が切り替わった?みたいにあの部屋に居たんだよね。そして女であることを馬鹿にするみたいに追い出されたってかんじだな。

ふむふむ。で、ここはどこなのだろうか?

城門を背に周りを見渡す。

んー。なんか中世な感じ?の街並み。車は走ってないみたい。代わりに馬車が走ってる。でも馬車を引いているのが馬ではない。巨大なトカゲ?なんか恐竜みたいな?

道行く人たちは普通に人間もいるけれど、なんか尻尾とか獣の耳?を付けている人もいる。猫耳とか付けてるって何か仮装パーティとかあるのかな?

いや、そんな事よりここ、どこだよ!

日本語使ってたし日本なのかな?

それとも普通に夢?

とりあえず適当な人に話しでも聞いてみよう。

「すみません。ここって日本ですか?」

私はとりあえず通りすがりの優しそうなおじさんに声をかけた。

「日本?なんだいそれは?聞いたことないな。どこかの小さい国の名前かい?ここはマークレイって国だぞ?お嬢ちゃんは旅人かい?今旅をするのは危険だというのによくやるよ。」

「危険って?」

「おいおい、お嬢ちゃん知らないのかい?どんな田舎からやってきたんだか。最近大人しかった魔王軍が勢力を伸ばして来ててな、それに便乗して野性の魔物達も活発化して来ているんだよ。町を出るならある程度の強さか傭兵を雇わないと死んじまうぞ。」

魔王?魔物?なんかファンタジー感の溢れる夢だなぁ。ってことは私は魔物達と戦う女騎士?みたいなのを目指すのかな?

「まあそういうことだから。気ぃつけなよ?お嬢ちゃん。」

優しそうなおじさんにお礼を言って別れる。

武器になるものが必要ってことがわかった。

武器屋を探して町をぶらぶら歩く。

商店街っぽく屋台がずらーっと並んでいる大通り?のような所に出た。

なんかこの辺に武器とか売ってそう!

探してみよう。

「嬢ちゃん!元気になる薬だよ!」

なんかフラスコ?のような瓶が大量に並んだ屋台のおじさんが声をかけて来た。

なんか青色の液体?が入ったフラスコを見せてくる。

なに?麻薬か何かを売りつけようとしてるの??ってか、毒でしょ?青色ってヤバ気じゃない?毒を売ってる店なのかな?

魔物に飲まさせれば倒せるとか?

……いくつか持っていても良さそう。

「おじさんー。その青いのいくら?」

「2000Gだ。」

「ちょっと高くない??」

ん?高いのかな?反射的に答えちゃったけど、そもそも"ジー"って何?この夢の国?のお金の単位かな?

「円に直すとどのくらいですか?」

「円?なんだそりゃ?うちはこの国の金しか扱ってねぇよ。冷やかしなら他所でやってくんな!」

しっしっ。と私にどこか行けとジェスチャーしている。

円が使えないって、まずは銀行に行かなきゃってこと?ってかそもそもこんな田舎っぽい夢に銀行なんて存在するの?

「お嬢さん。困ってるのかい?」

「え?あ、はい。ちょっと、お金がなくて。」

なんか優しそうな人が話しかけて来た。

「お金がないのかぁ。何が欲しいんだい?おじさんが買ってあげるよ。」

そう言い、肩を抱き、私をどこかに連れて行こうとする。

え?ちょっ。

「大丈夫ですから!」

男の腕を振り払う。

「あぁごめんね。こういうのダメだった?そんなに警戒しなくていいから。」

「いえ、ごめんなさい。」

「ちょっ。」

私は謝ると全速力でその場から逃げた。

はぁ……はぁ……。

つ、疲れた。

鳥肌やばっ。

身体全身で拒否反応示してる。

かっこいいおじさま系か普通にイケメンだったら、夢だしついていってもいいかな?って思ったんだけどな……。

あぁ、もう陽が沈んで来てるなぁ。

現実の太陽より大きくて綺麗に感じる。

綺麗に見えるのって空気が綺麗って事なのかな?

朱色を残し、山に消えていく太陽。

幻想的で、何故だか寂しさを感じた。

って宿を探さなきゃじゃん!ってかお金ー。

町にいても仕方ないし、とりあえず外に出てみようかな。

「おい!止まれ。」

町の外に出れそうな門を通ろうとしたら門番?に止められた。

「こんな時間から外に出るのか?夜間は門を閉ざすから朝にならないと中に入れないぞ?」

なんか職質みたいなことされるのかと思った。

親切に心配してくれてるだけなのかな?

「お金なくて泊まるところも無いので魔物?を倒しながら野宿でもしようかと……。」

「な、なるほど……。若いのに大変だな。」

門番は一瞬引きつった顔をし、それだけ言うと道を開けてくれた。

ちょっと泊めてくれると期待したんだけどなぁ。まぁこんなものか。

私はお礼を言い、外に出る。

外は大分と暗かった。

町が見えなくなると本当に動けなくなりそうなほど暗くなりそうだなぁ。

よく考えたら明かりになるようなものすら持ってないな。

門の方を振り返る。

門番が心配そうに見ている。

「あのー。なんか火のつけれるものとか貰えませんか?」

駄目元で門番に聞く。

ほらよ。と門番は紙わま?お札?みたいなのを渡して来た。

「それは炎の札といってな。燃やしたいものに貼って燃えろと念じるとその札を起点に札を貼られたものが燃え上がるんだ。焚き火とかの火種とかに便利だから持って行きな。」

へぇ。なんか胡散臭いけどそんな便利なものがあるのか。ライターとどっちが便利なんだろ?使って見てからだなぁ。

それよりどういう原理で燃えたりするのかが気になる。

「ありがとう!こういうのお金かかるんじゃないの?」

「いいって!札の1枚ぐらい。何もしてやらずに死なれると寝覚め悪りぃしな。生きて戻ってくれることを信じてるぜ!」

「そっか。じゃあありがたく使わせてもらうね!」

門番に手を振り、暗い道を歩き出した。