「え…」 「私、あの日、」 ほんとうは、あの日。 ずっと、ずっと、私。 「秋樹とキスがしたかったぁー…」 瞬間。 温かい腕に掴まれた手首。 引き寄せられた身体に、胸がドクンと鳴ったのが自分でも聞こえた。 ふわり、と私の唇に優しく触れた秋樹のそれは、温かくて。 少し濡れた唇と。 鼻をくすぐる秋樹のにおい。 …あの日できなかったキス。 ゆっくり、顔が離れた瞬間、涙が零れた。