「…あき」 小さな声で呼んだ名前は、誰もいない教室に反芻する。 「秋樹」 だってその名前すらも、こんなに特別で。 窓の外からはみんなの楽しそうな声。 秋樹の机に触れた私の指先には、無機質な冷たさが伝わってくるだけで。 秋樹がここで勉強して。 授業中に居眠りして。 机の下でスマホいじったりして。 お弁当食べて。 数分前までは、秋樹がここにいたのに。