「なんで、来たんだよ。……俺、おまえのことわざと避けてんのわかんなかった?」



蓮見が息を飲むのがわかる。下唇を噛んで、床に視線を落とした。

その様子に気づいた俺は、なるべく威圧的にならないよう、言葉を選びながら話を続ける。



「……別に俺だって、おまえが嫌いになって、そんなことしてたわけじゃねぇよ。……けど、部室、で……あのとき蓮見、こわかっただろ? それでも俺、わかってても……おまえが近くにいると、またああいうことすっかもしれない」

「ッ、つ……、」

「矛盾、してんだろうけど……俺は、おまえのことこわがらせるのヤなんだよ。ああいう真似、もうしたくない。蓮見だって──」

「や、やだ!」



話を遮って、蓮見が珍しく荒い声を出した。

わかったつもりではいたけど、その言葉がズキリと胸に突き刺さる。

俺はふっと、彼女から顔を背けた。



「……うん、そうだろ。だから、しばらく近づかな……」

「そっ、そうじゃなくて……! 辻くんと話せなくなるのが、やだ!」

「……は……?」



予想すぎる言葉に、思わず目を丸くする。

彼女は少しだけためらうそぶりを見せながらも、数メートル先の場所から1歩、また1歩と、こちらに近づいてきた。