「辻くんが助けた女の子、2年生だったんだけど。すっごくあなたに感謝してて、明日にでもお礼に教室行くって言ってたわ」

「あー……」



別に、無事だったならそれでいいんだけど。

言われたセリフに、正直面倒くさいなと思ってしまった。

それが顔に出てしまっていたのか、先生は苦笑いしている。



「それとほんとはね、落ちたとき一緒にいた里見くんが、目を覚ますまで付き添うって言ってたんだけど……辻くんだいぶ顔色も戻ってたし、教室に帰しちゃった。後で連絡してあげたほうがいいわよ」

「あ、はい」

「ちなみに、辻くんの親御さんにも電話で連絡済み。迎えに来てくださるみたいで、あまり動揺もしてなかったわね」

「あー俺、昔から野球で怪我はしてるんで。慣れてるんじゃないすか」

「まー、とんでもない息子」

「う゛っ、」



俺の話を聞いた先生がけらけら笑い、バシリと予想外に強い力で俺の背中を叩く。

……いや先生、一応病人にそれはまずいんじゃないすかね。普通に痛いわ。



「それじゃあ、私はちょっと職員室に行ってくるから……もし他の生徒が来たら、私は職員室にいるって教えてあげてくれる?」

「わかりました」



俺の返事に、微笑みながらうなずく。それから先生は踵を返した。

再びカーテンを閉められると姿が見えなくなり、靴音が遠くなる。ベッド上に取り残された俺は、ドアが閉まる音を聞いたあと思わずため息をついた。


なんつーか、ほんと、ついてねぇな……。

まあ、怪我がなかっただけ不幸中の幸いと言えるか。

あーでも、どっちにしろ今日は部活禁止か。つまんねぇ……。


急激に気分が落ちて、また深く息を吐く。

それから迎えが来るまで横になっていようと、体を倒しかけると。