「この堅物ヒロからノロケ話とか聞ける日がくるのも、そう遠くはなさそうだなー」

「はあ?」

「なんだろなー、時間の問題? “ただのクラスメイト”って態度じゃなかったしな、あれ」

「……? なに言って……」



やはりどことなく機嫌の良さそうな悠介に、俺が眉をひそめながら視線を向けたそのとき。

俺たちは、下から階段をのぼってきた女子生徒とすれ違った。


──が。



「ッきゃ……っ」

「な……」



次の瞬間、後ろから耳に届いた小さな悲鳴に振り返って──……それからはもう、無意識だった。

迫ってくる、セーラー服姿の背中。それを自分の不安定な足場なんか気にする余裕もなく、力を込めて押し返す。



「ヒロッ!!?」



ぐら、と自分の体が傾き、とっさに目を閉じた直後。

切羽詰まった様子で俺の名前を呼ぶ、悠介の声が聞こえた。