ばすん‼︎


久しぶりの磯野の球に僕は体中が痺れた。いや、脳がびんびんしている。


ボールを投げ返し、再び中腰になって構える。


何度かミットにボールを慣らし、磯野が真っ直ぐに両手を上げた。


片足を上げ、モーションに入る。


もう何回、何万回も見ているフォームは、飽きないくらいに綺麗だ。


振りかぶったボールが、一直線にミットに叩き込まれた。


磯野のボールなら、このまま吹き飛ばされてもいい。


けれど僕は耐える。


なぜなら、誰にも受け止めることができないからだ。


幼い頃からのバッテリー。


マウンドに立つと、磯野のことが手に取るように分かる。


キャッチャーは妻で、ピッチャーは夫。


ともするとコントロールを失いがちな夫を、妻がリードして諌(いさ)める。


それは僕にしかできない。


僕にしか__。


「中島、もう一球いくぞ‼︎」


「ああ磯野、思い切りこい‼︎」


僕たちは無敵だ。