心がもやもやしている。
仲の良かった親友に、初めてのカノジョが出来た。
もしもこれが逆なら、磯野は自分のことのように喜んでくれるだろう。
それが分かっているから余計に__。
次の日も手を繋いで下校する2人を、僕は物陰から見つめている。
あえて2人の間に割って入り、照れ隠しの証にそれぞれの肩を両手に抱く。そんな大胆な芸当も出来やしない。
ただ指をくわえて見送るだけだ。
テスト期間中でも、僕と磯野は球を投げ合うのが日課なのに。
これからどちらかの家で、肩を寄せ合って勉強でもするのだろうか?
そう思うと、このもやもやがワサワサと広がってく。
そもそも、どうして僕は怒っているのか?
磯野を取られたから?
僕の磯野を?
僕だけを見ていた磯野を?
でも、もしかして磯野は__?
僕を見ていたんじゃなくて。
僕が構えているキャッチャーミットを見ていただけなのか?
ああ、磯野の球を受けたい。
花沢さんなんかには絶対に捕れない、あいつの球を。