「中島、おはよう‼︎」
朝練に現れた磯野は、いつもと変わりがなかった。
それどころか__バリカンで髪の毛を短く刈ってある。
それが謝罪の証だとでもいうように。
「磯野、こないだは__」
「早く行こうぜ‼︎めちゃくちゃ投げたい気分なんだ。俺の球を受けられるのは中島、お前だけだろ?」
「磯野__」
あの、話が__と続けたかったが、さすがに今はまずい。
わだかまりが解けただけでも良しとしよう。
軽くランニングしたあと、肩慣らしに球を投げ合う。
ミットを手に屈み、肩を回した磯野が振りかぶった。
__バスン‼︎
真っ直ぐな思いを、しかとこの手で受け取る。
やっぱり磯野だ。
磯野の球には迷いがない。
この球を受け取れるのは、僕だけ。
花沢さんでもない、この僕だけなんだ。
待ってろ中島、この僕が変えてやる。
アニメの同志にそう誓うと、僕は放課後、磯野を呼び出すことにした。
大事な話があるからと。
校舎の裏で、何度も何度も練習をする。ピッチングと同じ、このストレートな思いを投げるんだ。
__き、来た‼︎
足音が聞こえてきた。
とうとう、その時がやってきたんだ。
全てを打ち明ける、その時が___?
「磯____野?」
そこに現れたのは、磯野ではなかった。
「中島くん、話があるの」