《宗吾side》

レストランを出て、ロビーを早足で歩く葉瑠に少し遅れた俺は、小走りに駆け寄り、何とか腕を掴んだ。

葉瑠が俺を見た。

とても軽蔑した目だ。

何も知らせず、突然こんなところに連れてこられ、挙げ句、両親や婚約者に会わされ、俺が葉瑠と結婚するとまで言った。

「…葉瑠、何も言わずにここに連れてきたこと、すまないと思ってる」

…今まで散々縁談を持ちかけられ、断り続ける俺に業を煮やした母親が、勝手に決めた婚約者。

俺はどうしても、それを受け入れられず、突然出逢った葉瑠なら、一時の付き合いだけだと、好都合な相手だと勝手に思ったのが、始まりだった。