わたしが、少しでもせんぱいの力になれたのであれば、それでいい。

わたしのちっぽけな勇気で、せんぱいが前に進めたと思えたのなら、それでいい。

もう、充分なくらい。



「……だからさ、約束通り、これからはもっと、凰香ちゃんのこと、大切にさせてよ」



加野せんぱいは、わたしの目をじっと見つめながら、わたしにそんなことを言った。

まっすぐな目。真面目な顔。

そして、伸びて来る、大きな手。



「…もう、大切にされてますよ…」


この間、せんぱいを見送る時にも言われた言葉。それを、改めて言われると、ものすごく嬉しくて。

なんだか、胸がギュッと締まって、たまらない気持ちになってくる。



「…足りない。もっと、ちゃんと、俺の特別として、大切にしたい。大事にしたい」

「………っ」


繋がれたら両手に、涙がひと粒、落ちて来た。




「俺の、特別な子に、なってくれる?」





—— せんぱいのくれる言葉は、1つ1つが、夢みたいだ。

わたしをしあわせな気持ちにしてくれる。明るくしてくれる。嫌なことがあっても、前向きにしてくれる。

せんぱいに出会って、もらってきた言葉それぞれに、わたしにとっては大きな意味があって。

それでも、ずっと、せんぱいからわたしに向けられた特別な言葉が欲しいって、思ってた。