「先生は私に『俺を信じて、不安にならないでいて。』と言って、約束の指環を着けてくれたでしょう?

だから私も…ね?」



「……」



先生の瞳が戸惑う。



「…嫌?」



窺うように訊ねる私に



「そうじゃない!」



と先生は言う。



「そうじゃない。けれど…



それは南条を…穢してしまう気がして…」



「初めてじゃないよ?私。」



「え…」



「先生私にキスしたでしょう?放課後の選択教室で。」



「あ…あぁ…」



清瀬くんと付き合っていた時、アルバム委員会の後の選択教室で先生にキスされた。

あの時はあまりの急なことに驚いたし哀しかったけれど、今になってみれば大好きな人とのファーストキスだった。



「だから…ね?大丈夫。」



「南条、あれは…!」



微笑む私に先生が慌てて言う。



「あの時は…ごめん。

お前の気持ちも全部無視で、俺の感情だけ押し付けて…

あれは…

無かったことに…」

「無かったことになんて出来ないよ。

だって私には…

大好きな人とのファーストキスだもん。」

「南条…」



先生は瞳を閉じて息を吐く。

そして再び開いた瞳で真っ直ぐ私を見つめた。