トンネルから出て、プリズムのように色とりどりに揺らめく水辺を歩いていたとき、ぽつんと鼻先に冷たいものを感じた。

冷たい粒はひとつ、またひとつと頬へ手の甲へと落ち、次第にその数が増してきた。



「雨、降ってきたな。」



先生が暗い空を見上げて言う。



「もう大分いい時間になったし、帰ろうか。」




ホントはもっと一緒にいたい…



頷きかねている私に先生が囁く。



「車の中なら濡れないし、それにふたりになれるでしょ?」

「!」



頬を紅くした私に先生は少し意地悪な顔で、

「南条可愛い。」

と言った。



帰りの高速は今日のことや学校のこと、勉強のこととかを先生と喋りながら帰途に着いた。



でも、もうこの幸せな時間が終わってしまうことにどこか淋しくなる。

『デートの帰り道は少し切ない』なんてことは歌の歌詞か何かで知ってはいたけど、こんな感じなんだなぁ、とぼんやり思った。



窓の外は12月の雨が肌寒く降り頻り、それがますます切なさを煽る。

私は膝の上に置いた白いマフラーを手に取り、肩から掛けた。