やがて涙が止まって、私は言った。



「私もね、先生にプレゼントがあるの。」

「ほんと?」

「うん。でもね…

大したものじゃないから、こんなに素敵なもの貰うと思わなかったから恥ずかしいな…」

「なんで?南条が俺のために考えてくれたんでしょ?何だって嬉しいよ。」

「うん…」



手にした白いレザーのバッグからためらいがちに小さな箱を取り出し、先生に手渡した。



「チョコレート?」

「…うん。」



何を渡していいか分からなくて兄に相談した。

「5歳も年下の彼女から貰うならあんまり高くない物がいいな。頑張らせちゃったと思うの、辛いからなぁ。」

と言う兄の助言に、ベルギーのチョコレートを選んだ。



「ありがとう。

でも、食べるの勿体ないな。」



先生はチョコに負けないくらい甘い顔で微笑む。



「食べなきゃ溶けるよ?」



嬉しそうな先生に私も微笑み返す。



と、眼が合った先生がふと真顔になる。



「南条…」



そっと頬に触れられ、先生が少し身を屈める。

触れた指も近付く顔も青い光に映し出され、幻想的な空間に頭の中が痺れていく。

そんな朦朧とした感覚の中で、



(私…先生にキスされる…)



なんてことだけはっきりと思って、私は瞳を閉じた。



直ぐそこに感じる先生の気配。体温。



そして─