それから、庭園を一望出来る展望スペースに上る。

けれど、そこは既に人でいっぱいで、庭園を見ることがほとんど出来なかった。



「南条。逆から見てみようか?」

「逆?」

「うん。向こうから。」



先生が庭園の先を指差す。



展望スペースから庭園を挟んだ奥は小高く丘陵状になっていて、そこから庭園を見れば空いている上に綺麗に見えそうだ。



「ん。行ってみよう!」



階段を降りて、先生と光の庭園の中に降り立つ。

全てを染めるような青の煌めきの中をふたり歩く。

丘を上り切ると、振り返った先生の顔が仄かな光の中綻んだ。



「見てごらん。」



私も庭園を振り返る。



「わ…!」



丘の下は一面仄かな青。

靄がかかるような青の中に所々光の柱が立ち上っている。

その間を時折、蛍が飛び交うかのように昼白色の小さな炎が瞬いては消え、消えては瞬きしていた。

こうして青の庭園を俯瞰していると、地球を作った神はこんな風に地球を眺めているのかな、なんて思う。



隣で先生が呟くように言う。



「やっとふたりになれた。」

「!」



振り仰いだ先生の顔はふわりと蒼碧に照らされて一層優しげで、その柔らかな微笑みに心をぎゅっと掴まれる。



「ねぇ、南条。」

先生が私を呼ぶ。



「南条は辛くない?」

「えっ?」

「俺とのこと。」

「…どうして?」

「こんな風に一緒にいてもそれを秘密にしなきゃいけないこととか、俺が君をどう思っているかを言葉にしないこととか…そういうこと。」

「…!」