庭園の入口まで来た時、

「お待たせ致しました。イルミネーション、点灯致します!」

というアナウンスが入り、同時に視界が青白い光に満たされた。



「うゎ…ぁ…」



目映いまでの青く煌めく世界。

樹が、花が、土が、水が、透き通る青の光彩に浮かび上がる。

人も、空も、冷たい空気も、全てがその瞬く青に一体になる。

それはまるで天空に溶け込んでしまったようだった。



そして私の傍らには─



「…綺麗だね。」



先生の微笑みも青に彩られ、いつにも増して美しく見えた。



「…うん。」



眼に映る全ての物が夢のように青く青く輝く。

夢のように…



(夢だったら…やだな。)



私はふと先生のコートの肘の辺りに手を伸ばす。



でも。

それに触れかけて、やめておいた。



触れてしまったら、幸せ過ぎて何か言い得ぬ不安が襲うような気がしたから。

不安が現実に引き戻してしまう気がしたから。



「南条、向こうも行ってみよう?」



先生がもう一度こちらを振り返る。

きらきらと青を反射する先生の瞳に私が映る。



(幸せだよ。夢みたいに幸せだよ…)



「うん。」



私も先生の真似をしてポケットに手を突っ込んで、後を追った。