俺は南条のいなくなった廊下に立ち竦む。



夢も希望もないと言いながら、君は強く美しい。



それに対して俺は…?



君にすがって、君のためと言い訳して逃げて…



決して「仕事」とだけ思って

『南条の夢を一緒に探す』

なんて言ったわけじゃなかったはずなのに、

『南条とは何もない。大丈夫。』

なんて、自分にまで言い聞かせて…




『先生可愛い~』と言われて不服を言いながら、実際はそれに甘えていたのは俺の方だったんだ。



強くありたい…

君に適うように。

君が信じてくれたように。



「初原先生?」

隣の教室に来た先生に声を掛けられ我に返る。



「あ…すみません…」

慌てて教室に戻る。




その日の授業はもう何を喋っているかもよく分からなかった。

気付くと君のことを考えていた。



いや、それ以来俺は常に君のことばかりを考えてしまうようになった。



ねぇ、南条?

君は今何を思うの?

君の眼には俺のこと、どんな風に映ってる?




答えの出ない問いを叫び続ける。

そんな日々の始まりだった。

     *  *  *