ドキドキしながら先生に眼を向けると、先生は真面目な顔で私を見ていた。



「いいね?」



「…は、はい。」



「よし。じゃあ誰か来る前にそれしまって。

それから…」



言いながら先生は柔らかく微笑む。



「隣、行ってもいい?」



「えっ!はっ…は、は、はいッ!!」



先生はまたくくっと堪えるように小さく笑うと、テーブルを半周するようにして私の隣に近付いてくる。

その間私はそわそわと落ち着かなくなってしまって、もじもじしながら俯いていた。



先生は私の隣の椅子に手を掛けると少し腰を屈めて、私の頭の横で囁く。



「ほら、早く片付ける。」



「!!」



(近いっ!近いよ先生~!!)

咄嗟に先生の声がした左の頭のはち辺りを押さえる。



「あ、嫌だった?ごめんね?」



そう言う先生にぶんぶんと首を振ると、先生は

「ふふっ。」

と笑って椅子に座った。



緊張でまた震え出す指先でまた箱の蓋を閉め、紙袋に戻す。

と、直ぐに先生が椅子ごと私の方へ身体を寄せる。



「やっと逢えた。」



先生が私を覗き込むようにして微笑む。

鳶色の瞳が優しく潤み、水晶のようにきらりと瞬く。



「せんせ…」



「昨日も逢いたかったんだけどね、試験週間はなかなか忙しくて、昨日やっと時間が出来てそれ買いに行っちゃったから。

ごめんね。」



「う、ううん。」



私がふるふると首を振ると、先生は一層優しく眼を細める。