「自分で泣き止めよ?



もう胸貸してやるの俺の仕事じゃねーからな。」





清瀬くんは私から離した手をポケットに突っ込む。



「あーぁ。天体観測会ん時やっぱお前のこと諦めなきゃ良かったなぁ。

そしたらお前があのイケメン先生に出逢う前に俺のもんになってたかもしんねーのに。」

「……」

「一度逃したチャンスは、簡単に二度目は回って来ねーんだよ。

だからお前のせいじゃないから泣くな。」



そう言って清瀬くんはにっこり笑った。



怒ってると思ったのに、むしろ笑ってて。

優し過ぎるほど優しいのに『嫌だ。』なんて冗談言って、『自分で泣き止めよ?』なんて突き放してみたりして。

優しさに胸が痛むのに、でもそんな清瀬くんに吃驚して、止めどなく流れていた涙が一瞬止まった。



あぁ、そうだ。もう泣いちゃいけない。

もう清瀬くんに甘えちゃいけない。

泣き止まなきゃ、自分で。



唇を噛み、瞳を大きく開く。

これ以上涙が溢れないように─