「東京の外国語大学の英語学科…」
村田先生が俺に眼を向ける。
「俺の母校です。」
俺が答えると、先生は今度は南条に視線を戻した。
「親御さんは了承するのか?」
「します!
させて見せます!」
南条の声は凛としていた。
一分の迷いもないように。
村田先生が大きく溜め息を吐く。
そして─
「初原先生。」
「…はい。」
「南条の指導、頼みます。」
「え…」
「岩瀬先生には俺から話しておくから。」
「は、はい!」
「村田先生!」
俺の上擦る返事に南条の声が被る。
「ここまで毒されてたら俺の手には負えねぇよ。」
村田先生は溜め息混じりにそう言い残して、階段を降りて行った。