「じゃあ、今からガオレンジャーの曲弾くからな!」

電子ピアノの前で、そう笑顔で言った彼。

すると、続々とちびっ子達が集まってきた。

「お兄さんまた弾いてくれるの!?」

「もちろん!歌って良いからな!!」

「はーい!!」

元気よく部屋に響き渡った子供達の声は

明るさに満ちていて眩しかった。


――私はこの子達を尊敬する。

――私とこの子達は根本的に違うのだ。




私は彼の隣ではなくて

彼から遠く離れた部屋の隅で座って

彼やちびっ子達の様子を見ていた。

すると、

「…ねぇ。お姉…さん?」

と2つ結びの女の子が隣に

ちょこんと座ってきた。

思いがけないことで

思わずビックリする。


「どう…したの?」


「お姉さんってさ…いつからいたの?」


―――泣きたくなった。

色々な意味で。

そして、謝りたくもなった。

ごめんね、と。

もちろん、私も悪くないし

この子にも非がある訳ではない。

でも、その女の子が言った言葉には

それだけ、私を動揺させる物が

込められていた。


「…ついさっき、だよ。」

私は嘘をついた。

たぶん、彼女が

嘘の意味に気づくことはないのだろうけど。

「ふーん。そっか。」

私の返答を聞くと女の子は

素直に私の言葉を受け入れていて。


――そのことは、また私を締め付けた。


「お兄さんに曲、リクエストしてきなよ。プリンセスのやつ、お兄さん、この前練習してたよ。」

そう彼女に言ったのは

この子が一刻も早く離れてほしいと

思ってしまったから。

「本当!?」

でも、そんな私の本心を知らない女の子は

私の言葉を聞くと一気に目を輝かせた。

「リクエストしてくる!」

と言ってちびっ子達の群れに合流する手前で

振り向いて私に言った。

「お姉さん、ありがと!」


――どうか、この子が

――私の嘘に気づきませんように。

――そう思っても良いだろうか?