飯倉くんへ
たしかに少し調子に乗って余計なことまで書き過ぎた自覚はありましたが、まさかここまで言及されるとは思っていませんでした。
初めはベッドの上で気楽に読んでいたのに、いつのまにか正座をして読むはめになりました。
そういえば、私が学校を休んだとき、飯倉くんがノートを貸してくれましたね。
あなたの思っていた通り、すっかり忘れていました。
恩知らずでごめんなさい。
飯倉くんのノートは、字が綺麗なだけでなく、きちんと整理されていてとても見やすかったです。
先生の話などもメモを取っていて、休んでいた私にもわかりやすかったです。
ありがとう。
ですが、私にも言い分があります。
飯倉くんは自分が怖いという自覚がないのでしょうか。
ピアスをつけて、シャツはボタンを開けてネクタイもつけないなんて、全身でヤンキーと言っているようなものです。
そんな人に声をかけられたら、震え上がってしまうのも仕方ありません。
私はヤンキーの知り合いなんて中学までいたことなかったので、もう恐怖で授業中も眠れませんでした。
着たいのか脱ぎたいのかわからないダラっとした服装はまあ置いておいて、眉間のシワだけでも何とかしてください。
それと、質問についてなんですが、答えになっていません。
たしかに私は友達から住所もろくに聞かれなかったという悲しい告白をしましたが、それについてはどうでもいいのです。
いや、どうでもいいわけではないのですが、それは話の本題から外れています。
私が聞きたいのは、どうして飯倉くんが私に住所を教えてくれたのかということです。
それなのに飯倉くんはねちねちと、私がいかに人望が無いかというのを書き連ねていて、途中で挫けそうになりました。
はぐらかさないで、もし私とお友達になりたくて書いたというのなら、素直にそう言ってください。
榎本結衣
P.S.飯倉くんは、普段は乱暴な口調なのに手紙では敬語なのが意外です。
結構真面目なんですね。