「りりちゃん、もうすぐ出口だからね? 
もうすぐ終わるからね」


ぎゅっと俺にしがみついたまま、
動けなくなっているりりちゃんに声をかける。


「りりちゃん、歩ける?」


「……無理」


「じゃ、入り口に戻る?」


「……もっと無理」


泣きべそかきながら、俺の背中に両手をまわして必死にしがみついてくるりりちゃんを

戸惑いながら両手で抱きしめた。


腕の中で怯えて体を縮めているりりちゃんの心臓の音が、

薄いTシャツ越しに伝わってくる。


俺の心臓だって、
もう崩壊寸前ってレベルで

ドキドキしてる。


こんなの、ドキドキするなっていう方が無理だ。


ドキドキしながらも、
りりちゃんが落ち着くまで

背中をぽんぽんと軽くたたきながら
なだめていると…


「お、いいな~🎵
カップルのいちゃいちゃポイントじゃん。
俺も次は彼女と来て~」


「お前には無理だよ」


「つうか、あいつらキスしてねぇ?」


と騒ぎながら大学生らしき一団が通り過ぎて行った。


カ、カップル?
いちゃいちゃ…

キ…キスなんてしてないしっ!


……いや、出来るものならしたいけど。



そんなことを考えていたら、
ますます心臓の鼓動が激しくなる。


目の前ののれんの奥に扉がチラリと見えたので
出口かと思って、近づいてみると…



「玲音っ!離れないでえ~〜!!!」


少し離れただけで、
りりちゃんが悲鳴のような声を上げる。



「一緒にいるから、大丈夫だよ」



戸惑いながら、りりちゃんを両手で抱きしめる。



必死にしがみついてくるりりちゃんの頭に唇を落として
小さく呟いた。


「ずっと一緒にいるから、…大丈夫だよ」