「あのさ、りりちゃん。誰かに誘われたり告白されたこと…ある? 」


「ないよ? 」


「即答⁈ 」



しばらくなにやら考えていた玲音が
おずおずと口を開いた。


「た、たとえば、うちの先輩とか」


「サッカー部の先輩? ないよ」


そもそも告白されたことなんて一度もない。


「り、りりちゃん、よく考えてみて!

話しかけられたりしなかった?
た、例えば高松先輩とか! 」


「高松先輩ってだれ? 」


「うちの部のキャプテン! 」


「知らないよ」



玲音は戸惑いを隠せない様子で、
なにやらぶつぶつと呟いている。


うーん……


3年の先輩に話しかけられたことなんて、あったかな?


最近あったことを、もう一度思い出してみる。



「あっ‼︎ 」



「どうしたの?」



「 そういえば社会科資料室に荷物を運んでいるときに、3年生の先輩に声かけられた! 


ひょろっと背の高い爽やかな…あ、そっか!
あの先輩が高松先輩か! 」



「な、なんて言われたの? 」



「ん〜、よく覚えてないけど…

週末どこかに付き合ってほしいとか、
そんなことを言っていたような……」



「え?どこかにって…、どこに? 」



「さあ?どこだろうね?
玲音の夕飯作りたいから断ったけど」



唖然としている玲音を横目でいぶかしみながら、
その時のことを思い返す。


そこで、はたと思い当たる。



「あっ! もしかしたら、あれってサッカー部の買い出しのことだったの? 」


「へ?  そうなの? 」


「ほら、私、腕力だけは自信があるから! 」


そう言って、力こぶを作って玲音に見せた。


「 その日もね、日直だったんだけど

先生に"それ重いから一人じゃ運べないぞ"って言われた荷物を、

私ひとりで軽々運んじゃったんだから! 」


キョトンとしている玲音に、得意げに胸を張る。


「"おお、お前、すごいなぁ"って、先生もびっくりしていたよ」


なぜだか絶句している玲音の顔を覗き込む。


「玲音、どうしたの?
結構、重い段ボールだったんだよ? 」


「そ、そっか、りりちゃんすごいね! 」


「うんっ! 」



肘をまげて力こぶを作って、
得意げに玲音に見せる。



「りりちゃん、それでいいと思うっ!
これからもその調子でいこうっ! 」


「う、うん…? 」