「りりちゃん、痛い…」
ヨロヨロと立ち上がりながら、
恨めしそうに玲音が私を見つめる。
「ご、ごめんっ」
と慌てて謝ったけれど…
な、なんだか、玲音が小さくない…!
食事を終えて、ソファに座ってテレビを見ながらプリンを食べている玲音をちらりと見た。
あんなに小ちゃかったのに、
いつの間に背が伸びたんだろ?
なんだか普通の男子みたいになっちゃって
ちょっとショックだ……
このまま3年生の先輩みたいに大きくなって、
男臭くなって、
ごっつくなって
毛むくじゃらになって、
ゴリラみたいになっちゃったら、どうしよう…
……嫌だ。
「それだけは絶対に嫌」
「ん? なにが嫌なの? 」
テレビを見ていた玲音がくるりと振り返ると、
さらりと琥珀色の髪が揺れる。
「りりちゃん、さっきから、どうしたの? 」
首を傾げた玲音の白い肌に、
黒い瞳が輝いている。
どうか、どうか‼︎
このままの可愛い玲音でいてくれますようにっ‼︎
両手を合わせて、玲音にお願いする。
「りりちゃん、なにを拝んでるの? 」
「玲音が毛むくじゃらないように」
「は? 」
「ううん、なんでもない。気にしないで」
おばさんに相談してみようかな……
「そうだ! ワカメとか海藻とか、しばらくやめておこうね。
ほら、髪にいいっていうしね!
玲音がもじゃもじゃになったら困るしね」
「りりちゃん、さっきからどうしたの? 」
「いいの! 大丈夫! 私、頑張るからっ! 」
「う、うん」
すると、麦茶をひとくち飲んだ玲音が
言いにくそうに切り出した。