【side 玲音】


ぎこちのない緊張感に包まれた教室に入ると、
途端に見知らぬ男子数人に囲まれた。


「な、一緒に来てた子、名前なんていうの?」

「え?」

「すげぇ美少女。どんな関係?」

りりちゃんのことだ。


「……幼なじみ」


呟くように伝えると、途端に騒めき立った。


「うわっ! 
あんな可愛い幼なじみがいるなんて羨ましっ!」


「一緒に登校するとか、どんだけだよ!」


そのなかで一番背の高い、長田というネームバッ ジをつけている奴が声を張り上げた。


「名前、なんていうの?」


「如月玲音」


すると、ぽかっと頭を小突かれた。


「お前じゃなくて! あの子の名前だって‼」



「りりちゃんの名前?」



「りりちゃんかー‼ 名前も可愛いじゃん!」



さらに周りが盛り上がったのを見て、


りりちゃんの名前を口にしたことを
少し後悔した。