「玲音!よかった、ここにいたんだ!
急にどうしたの?」


「なんでもない。…ごめん」



情けなくて、りりちゃんの顔が見られない。



「玲音、なにかあったの?」



「なんでもないよ」



「玲音?」



「なんでもないってば!」



俺の顔を覗き込もうとしたりりちゃんに
思わず大きな声を出した。



そんな俺にびっくりしているりりちゃんの腕を強く掴むと、

道場に背中を向けて家に向かって早足で歩き始めた。



「玲音?どうしたの?」



話しかけてくるりりちゃんを無視して、
足を早める。



一刻も早く、道場から離れたかった。

りりちゃんを颯大から引き離したかった。


めちゃくちゃなことしてるって
自分でもわかっている。



でも、自分でもどうしてらいいのかわからなかった。