ゆっくりと顔を上げると、

道路の端で近くの高校の制服を着た2人が
体をくっつけて
ささやき合ったり、抱き合ったりしていた。

ふと、その姿にりりちゃんと颯大が重なる。


もし俺が先に帰ったら、りりちゃんは颯大と一緒に帰ることになるのかな…


そしたら、2人でこのままどこかに出かけちゃうかもしれない。



颯大はりりちゃんのことが好きだ。

りりちゃんを見るときの颯大の目は
とても優しい。

稽古の最中もりりちゃんに気がつかれないように上手く手加減しているのが分かる。


このまま一緒にいたら、

りりちゃんだって颯大のことをきっと好きになる。


颯大にだけには敵わないと愚痴りながらも、
りりちゃんはいつも嬉しそうにしている。


颯大は負けん気の強いりりちゃんんが唯一、
敵わないと負けを認めている相手。



悔しいけど、
りりちゃんにとって

颯大は他の誰とも違う特別な存在だ。



そう思ったらりりちゃんのことが心配になって、
居ても立っても居られず、



気がつけば道場へと向かう道を

全力で引き返していた。



りりちゃんが道場から出て来るまで、

自分を持て余して
落ち着かない気持ちのままウロウロしていると、

古めかしい門の奥からりりちゃんがやってきた。