イライラが止まらない。
颯大がりりちゃんを見つめるだけで、
颯大がりりちゃんに触れるだけで、心が泡立つ。
それがたとえ、稽古中の組手だったとしても、
波立つ感情が手に負えなくなってくる。
"りりちゃんの彼氏"と言っていたおばさんの言葉が頭に浮かぶ。
りりちゃんと颯大が2人で並んでいる姿はすごく自然で、
そんなふたりを見ていると頭に血が上って
自分でもどうしたらいいのかわからなくなる。
りりちゃんはなにも悪くないって頭ではわかっているのに、
りりちゃんのことまで許せなくなる。
「玲音、どうしたの?玲音ってば!」
りりちゃんの声が背中から聞こえてきたけれど波打つ感情は手に負えなくて
りりちゃんを残して道場を後にした。
無我夢中で走り、広い道路が見えたところでペースを落として、呼吸を整えた。
こんなことで怒ったってどうしようもない。
颯大も、りりちゃんも悪いわけじゃない。
そんなこと、自分でもわかっている。
それなのに、
りりちゃんが颯大に笑いかけるだけで頭がおかしくなりそうだった。