「入学式の写真ありがとう。早速飾らせてもらったのよ」


白いフレームの写真たてには、

私と玲音が中学の制服を着て学校の正門で笑っている写真が入っている。


おばさんは玲音の写真を宝物のように大切にしている。


目を細めて玲音の姿をまぶしそうに見つめるおばさんを見ると

胸の奥が痛んだ。



おばさんに、入学式での玲音の姿を見せてあげたかった。


「おばさん、今度は玲音と制服姿でお見舞いに来るね! 」


そう言うとおばさんはゆっくりと目を伏せた。


「いいのよ、部活が始まると忙しいだろうし…」

青ざめた表情でそういったおばさんに手を伸ばし毛布をかけ直した。


「おばさん、もう横になって。ゆっくりやすんでね。

また、玲音と来るね」


「りりちゃん、玲音、来てくれて、ありがとう」


力なく微笑んだおばさんに小さく手を振り、
病室の白い扉を閉めた。


病院の長い廊下を玲音と肩を並べて歩く。


週末なのに静まり返っている病院は
どこか居心地が悪い。


「玲音、大丈夫? 」



静かに首を縦にふった玲音は、

そのままバスに乗るまでなにも話さなかった。