「りり花、起きて!あぶないってば!
どんだけ図太いんだよ?!
ホッとするにもほどがあるだろっ! 」
ぐーぐー寝こけているりり花を必死でゆり起こすけれど、
一度眠ってしまうと、りり花はなかなか起きない。
つうか、自転車乗ってるんだけど…
こんなに爆睡するか?
自転車こぎながら、りり花を支えるのにも限界がある。
はぁ…仕方ない…
背中にもたれるりり花に
かろうじて届くくらいの少し高めの甘い声で呟いた。
「りりちゃん、どこ?」
保育園時代の俺の口癖。
すると、寝こけていたりり花が飛び起きた。
「玲音⁈ 大丈夫⁈ どうしたの?!
………ん??
あれ?!外?!え?自転車? なんで⁈」
自転車の荷台のうえで飛び起きて、
キョロキョロとしているたりり花のおでこをコツンと軽く叩いた。
「こんなところで寝たらあぶないだろ!
家に着くまでしっかりつかまってろって!」
「う、うん」
まだ寝ぼけているのか、目をゴシゴシこすっているりり花に呆れつつ、
また自転車をこぎ始めた。
まだ眠たいのか、りり花は背中にぺったりと寄り掛かっている。
「玲音…」
「ん?」
「ありがとう」
安心して俺に体を委ねているりり花の体温と
優しい声が背中に伝わってくる。
りり花、
俺はりり花の近くにいられるのなら、
なにも望まないよ。