【side 玲音 】



りり花が痛めた足をかばいながら荷台に乗り、

俺の腰に両腕をぐるりとまわしたのを確認して
ペダルを踏み出した。


コスモスの咲く花壇の横を
自転車で走り抜ける。


自転車を走らせると、すぐに、りり花が俺の背中にピッタリと頭をくっつけた。


「あー、なんか疲れたね…」


そう言って、俺の背中にもたれたりり花の重みに
胸がドキドキして苦しくなる。



俺はこんなにドキドキしてるのに、
りり花は俺に全くドキドキしないのかな。



りり花は俺といても何も感じないのかな…


疲れているのかりり花は
俺の背中にもたれながら黙ったまま。


しばらく進むと、

腰に回されたりり花の手の力が緩んできたので

一旦止まって、ハンドルから片手をはなしてりり花の両手を押さえた。


「りり花、しっかりつかまって」


それでも、りり花の両手はずるずると力を失っていく。


「りり花、つかまってないとあぶない」


けれど、返事はないまま。



おかしいな…


振り返ると、

りり花は俺の背中に寄りかかって、

クークーと眠っていた。




って!!!