「りりちゃん、その荷物かして」


「大丈夫だよっ!これ、結構重いんだ」


「あのね、りり花。俺、一応男だからね?」


ムッとした玲音が、サッと私のカバンを手に取った。


「そんなのわかってるよ?」



「全然わかってないよ。
りり花はなにもわかってない」


玲音の人指し指に、おでこを弾かれた。


……痛い。


「ここで待ってて。
佐々木から自転車借りてくるから」



そう言って自転車置き場に走った玲音は
すぐに、


ちはるちゃんの自転車を引いて戻ってきた。



「おいで、りり花」


ちはるちゃんの自転車を引きながら、
玲音が手招きする。



「はい、後ろに乗って」



玲音がサドルにまたがりながら、
後ろの荷台をポンポンとたたく。



「え? 玲音のうしろに乗って帰るの?
……なんか、イヤ」



すると、玲音が呆れたように長いため息をついた。



「…じゃ、どうやってその足で帰るの?

1人で大丈夫とか言ったら本気で怒るから」



もう怒ってるし…




「………」



「 ほら、しっかりつかまって」



荷台にすわり、玲音の腰に腕をまわす。



「なんだか玲音の後ろに乗るなんて変な感じ」



「…なんだよ、それ」



「補助なし自転車、なかなか乗れなかったのにね? 」



「りり花、そうやって保育園時代の話をするのやめろよ。

いつの話だよ…それ…」


「だって…」


「いいから、しっかりつかまって」


そう言って玲音が​ペダルを踏み出すと
体がふわっと後ろへ押し出された。


慌てて玲音の背中にぎゅっとつかまって、
玲音の背中にもたれかかった。




……あれ?



玲音の背中って、こんなに大きかったっけ?



そう思いつつ、

いつもの玲音の香りにホッとして、

あくびがこぼれた。