ぼたもちと稲荷寿司ができると、トシさんはふきのとうをすり鉢で擦り、味噌を加えて、ふきのとう味噌を作った。
それから、油を用意して生のふきのとうをさっと揚げる。サツマイモやにんじん、ゴボウでかき揚げも作り、鶏肉やタコは海苔をまぶしていそべ揚げにしてくれた。途中でお茶を飲んだり、聖が勘太郎の散歩に行ったりを挟んで、あっという間に夕食の時間だ。

並んだご馳走に私も聖も小学生のように歓声をあげた。

「ああ、うるさい。耳が痛くなるよ、あんたたちがいると」

トシさんは文句を挟みながらも嬉しそうだ。勘太郎も近くで餌をカツカツ食べている。
私と聖は稲荷寿司もぼたもちもたくさん食べた。天ぷらも漬物も、トシさんが育てたカブやブロッコリーも山ほどお腹に収めた。

「トシさん、ふきのとうの天ぷら、苦いけど俺食べれるよ」

威張って言う聖に、トシさんが言う。

「坊主は兄貴に顔は似てないが、雰囲気が似てるね。うるさいところも」

兄貴……迅のことだ。

聖がにかっと笑って答える。

「俺の方が兄ちゃんより頭いいよ。兄ちゃん、かなり馬鹿だったもん」

私はぶっと吹き出した。迅が聞いたら怒って聖と喧嘩になりそうだなと思う。

「まあ、賢そうには見えなかったね、迅は」

トシさんも真顔で答え、私はまた笑ってしまう。

あの夏の迅のことをこうして語れるのは、私たち三人だけなのだ。
迅が確かに存在していたと証明もできないけれど、私たちの記憶にはしっかり残っている。

迅はほんの一ヶ月だけ、この町で幽霊をやっていたのだ。