お父さんがボソッと呟いた。確かにお父さんの言う通り、今のままでは話の先、伝えたいことがまるっきり伝わらない。
「地球には休みが必要なんです!そこで私は地球から...いや神からある使命を授かりました!....それは神の使いの力を使って人間を滅ぼし、世界を救えという使命が!!」
あまりの静一先生の変貌に開いた口が塞がらなかった。
静一先生、まるで人が変わってしまったようだった。
「あぁ...来る!いよいよ、運命の時が!あぁ....なんとお美しい姿...
地球が綺麗になることを願っています....それでは皆さん、御機嫌よう。よい時を過ごしてくださいね。」
そう言うと、赤い液体が静一先生の頭の上から垂れてきた。それにキャスターの人も気付いた。
「え?は?え?え?血!?いや!いやぁぁ!!」
キャスターは泣き喚きながら、身体を左右に振ると、いとも簡単に静一先生の腕から離れた。
「あが...あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」
メギュッ!ブチュ!....ブチブチブチッ!
生々しい肉がちぎれる音がテレビのボイスから聞こえてきて、思わず小さい悲鳴が漏れる。
映画では味わえない、リアルの恐怖がテレビ越しに伝わってくる。
「な、何なのこれぇ!」
私が叫び声を上げるのと同時に、肉がちぎれる音は止まり、血が勢い良く噴射され、静一先生の頭はぱっくりと割れた。
ブシャーッ!
その割れた中からは血だけでなく、色々な肉片、脳みそまでずる落ちてきた。
私はこみ上げてきた胃液を抑えるので精一杯だった。
静一先生はユラユラと身体を二、三回揺らすとそのまま力無く倒れた。
テレビの画面から目を背け、隣を見るとお父さんが吐いているのが見えた。お父さんは根は臆病、そんなお父さんにはキツすぎる映像だった。
「うう...ゲホゲホ....い、今のは何なんだ?人の頭が...ぱっくり....オェ...」
私は言葉を発せなかった。喋るだけで吐きそうだったからだ。脳裏に染み込んだ静一先生の死に方、私は忘れることが出来ない。それ程衝撃的なことだった....
「うう...ま、真衣。大丈夫....ヒッ!お前誰だ!?いつからそこにいたんだ!!」
「お父さん?」
「こ、ここは俺の家だ!不法侵入だぞ!?警察へ訴えてやる!!」
お父さんはテレビを見ながら腰を抜かしていた。あまりの恐怖に幻覚を見てしまったのだろう。
「お父さん、しっかりして。そこには誰もいな...」
お父さんに近寄った私は体が硬直した。それは視界に居るはずもない人が映り込んでいたからだ。
その人はリビングのドアの目の前で、こちらを向きながら棒立ちしていた。
白い服に黒く長いボサボサの髪の毛、手は黒く澄んでいて汚い。そして血がその白い服に多く付着していて、ほぼ真っ赤。
髪の毛も血が固まったのか、何本か束になっていた。
この日の事を私....いや、全世界は忘れることはない。目の前に立っている人の姿も、テレビの出来事も。
そして同時に、この日に死んでおけば楽だったとも思っていた。
人類は進むとも考えてなかった絶滅という二文字のゴールへの道のりを一歩、踏み出してしまった。
貴重なお時間をこの作品に使って頂いた事、本当にありがとうございます。長い更新期間の末、ようやく完結しました。
今作は別の作品を書いている時にパッと思い付き、すぐに書きたいという衝動の中、今書いている作品に手をかけながら頭の中で物語を作っていました。
私が作品を書く中で、一番重要視している部分は本当に終盤、ラストの展開でどれ程印象に残る、読者の方々の予想を良い意味で裏切れるという事です。
なので、今作を読んでくれた読者の方々に少しでも良い印象を与えることが出来たのなら幸いです。
気付いたと思いますが、今作は謎を残しています。あの時あの人物が取った行動の意味、あの人はどうなるのか、何故余計にあんな行動をしたのかなどなど。
それは想像して考えてみてください。考えることもまた一つの楽しみだと自分は思っています。
今作の評価が良かったり書ける機会があるのなら、いずれかはその事について書ければと思っています。
そしてホラーで重要なハラハラドキドキ、緊張感はいかがでしょうか?
作品を書き始める当時は、本当に無言で近寄ってくる、想像してみると逆にシンプルで怖いものと感じたので、それでやってみようと思いました。
ですが、それだけでは足りないとも思った部分がありましたので、いくつか付け加えもしてみました。
ホラーならではの緊張感があったかどうかは分かりませんが、ほんの少しでも感じてくれたら幸いです。
本日は本当に、本当にありがとうございます。また次回作でお会いする事を心より願っています。