吉永は二つのガラスの破片を振り上げて見せたが、鬣犬はまだ余裕の表情。


「ふふふっ、切り刻むのか〜。それは中々気持ちいいんだよ?何度も何度も刺すことで幸福感が得られるんだァ〜。
さぁ!早く切り刻んでよォ!!私も切り刻むからァァァァァ!!」


鬣犬は発狂に近い声を出しながら吉永の攻撃を受け入れていた。こうもなってくると悔しい気持ちが大きかった。この呪いを解くために俺達が費やしてきた時間、その成果が今ここにあり元凶が目の前にいる。だが、その元凶には一切対策がない、逃げるしか出来ない。

無力感と絶望感が底無し沼のように、俺の身体をズブズブと追い上げてきていた。

だが、そんな俺に対して吉永は鬣犬を鼻で笑った。小馬鹿にしたような余裕ある笑い。

笑みを浮かべていた鬣犬の表情がそれによって固まった。



「ふふ....切り刻む?馬鹿じゃないの?あんたと一緒にすんなバァーカ。こうすんのよ!!」


吉永は振り上げていた二つのガラスの破片を思いっ切り振り下げた。その行き先は眼球、鬣犬の両目を刺したのだ。吉永は刺したガラスの破片を更に奥に入れ込むと、そのまま転がるように鬣犬の上から逃げ出した。



「グッ...目がぁ〜目が見えないぃぃぃい!と、取れない....」


鬣犬は黄ばんだ爪で目玉をガリガリとかいていた。