「うん。私はここから離れられないんだけど、外から食べ物を送ってもらうことが出来るの。私も最初は知らなくて、知らない内に人がここに来た時教えてくれたの。外で他人には見えない私がいるって。

この身体になってから、いつの間にか新鮮な食べ物が机の上にあることがあったりしたから、聞いた時は全然驚かなかったんだけどぉ〜。ちょっと気になるよねぇ〜」


鬣犬は持っている包丁をプラプラ振りながら言った。
その包丁が視界に映る度に俺は心臓を掴まれてるような感覚を得ていた。



「な、なぁ鬣犬ちゃん、俺達はまだ死にたくないんだ。逃がしてくれないか?」



「え〜?何で?」


「何でって....そりゃあ死にたくないからだ。鬣犬ちゃんが楽しい事をやっているのと一緒で、俺達もまだやりたいことがある。
お腹は減らないんだろ?それなら逃がしてくれないか?」


「ん〜...どぉしよっかなぁ〜。」


「頼む!俺達以外の人達もやりたいことがいっぱいあるんだ。もう一人の鬣犬ちゃんを....呪いを解いてくれ!!」


俺は藁にすがるような思いでお願いをする。半分は期待し、半分は諦めが生じていた。
このお願いには鬣犬にとってはデメリットでしかない。だが、もしかしたらという可能性に掛けたのだ。