そこはバスルーム。カビだらけのタイルに割れて破片が散らばっている鏡、そして異臭を放つ浴槽があった。だがそれだけで他にはなく、ここは行き止まりの部屋だった。


「お、おい。吉永、ここからどう逃げるんだ?行き止まりじゃねぇか!」


青山の質問を吉永は無視した。悔しそうに、困った表情を作りながら。

吉永の顔色を見て、俺達は唖然とする。本当に行き止まりと...


ドアのノック音が聞こえてきた。俺達はその音に過激に反応して、飛ぶようにそのドアから離れた。


そしてゆっくりと笑みを浮かべながら、鬣犬が入ってきた。


「入浴中失礼しまぁ〜す。私も入っていいですかぁ〜?」


鬣犬は部屋に入るとドアを閉めた。

そのドアが閉まる音は、俺達にとっての寿命宣告のように感じた。


鬣犬は片手に持っている包丁を俺達に見せつけるように、左右に振ってアピールをしてきた。
俺達はそれを警戒し、どんどん部屋の隅まで追い込まれていった。


「なんでそんなに下がるのぉ〜?悲しいよォ〜シクシク...」


そんな台詞と真逆に鬣犬は長い髪の先にある口角をあげていた。
明らかに俺達を弄んでいる、これは実験記録に書いてあった"遊び"だろうか。